π(パイ)

「にゃーにゃー。みんな寝れないときってどうする?」 部活が終了し部室で着替えをしていると、突然菊丸そんなことを言い出した。 「寝れないときっていうのは徹夜しなくてはいけない時という意味ではなく、  眠れないときという意味か?」 「そ、そうだけど・・。普通にとってくれよ乾ぃ」 「別に揚げ足を取ろうと思ったわけではなく、正確に答えを出すための必要不可欠の  質問だと思うのだが」 「と、とにかくどうしてるっ??」 乾に口でなんて勝てないことを菊丸は経験上よくわかっている為、 菊丸は反論はあきらめ、答えを催促する。 「うーん・・部活で疲れていつもベッド直通爆睡コースなんすけど」 「俺もそうだけどさぁ。ほら、やっぱ月1くらいはあるじゃん〜!そんなとき」 「ふむ。俺のデータによると英二が眠れないと思う日は平均して月に1.12回。  月1という表現は正しいな」 「って、どうやってそんなデータとったんだよ!!」 「なお、桃は約0.7回だから、月1回あるかないかぐらいだな」 「そんなもんスかねぇ・・」 データの算出方法になんて全然興味及び疑問も持っていないらしい単細胞男桃城である。 「くすっ。英二眠れなかった日は絶対次の日愚痴っているからね。  僕でもデータ出せようだよ」 三人のやりとりをいつもの笑顔で見守っていた不二がそう声を掛けると、 菊丸がなーんだとため息をつく。 「眠れない日なぁ・・俺はアクアリウムをじっと見てるかな。  幻想的なあの光と水のシンフォニーを見ているといつの間にか眠くなってくるな」 「僕も同じ様な感じかな。好きなクラシックを聞いているとリラックスして、  自然に眠くなってくるよ」 双方、しごく一般的な答えであるが、菊丸はアクアリウムなんて家にないし、 クラシックなんてつまんないーと文句をいい、不二を開眼させ大石の後ろにぴゃっと隠れる。   「俺は眠れない時は運動して体を疲れさせるかなー」 「え〜、ただでさえ部活で疲れているのに、まだ動くのタカさん〜」 「眠れないときっていうのは、クラブが休みの日が多いから消化不足なのかな。  さすがに俺もこの部活のあった日はすぐに寝ちゃうよ」 「な〜んだ。ねっねっ!手塚は!?」 「俺か・・?ふむ。眠れないときは無想して精神集中させるな」 「む、ムソウ!?」 「心を無にしていると、過敏になっていた精神がリラックスして、すっと眠りに入れる」 「なんか難しそうだにゃ・・。ねえーもっと簡単なのないの?」 あたりを見回し、何故か目をそらしている越前を見つけ目を輝かせる。 「おちびー!!おちびはどうしてるの!?」 「う゛・・別に何もしてないっス」 「嘘だにゃ。なーんか隠してる気がするっ!」 「・・・・っ」 「データによると越前は眠れないときは、カルピンを抱き枕にして寝るそうだ」 「なっ!なんでそれを・・!?」 「えーっ!やーんおちび可愛いっっvv」 動揺している越前に、ほっぺすりすり攻撃を仕掛ける菊丸である。 「くくっ。そーかそーか。可愛いところもあるじゃねぇか越前」 「う、うるさいっス!!」 顔を真っ赤にしながら叫んでも迫力はゼロである。 「海堂っ!次は海堂の番!なになに猫の肉球もみもみ?それとも乾のおやすみボイス!?」 「ち、ちょっと勝手なこといわないで下さいっ!!」 一体どこから肉球もみもみなんてものが出てきたのだろう。 菊丸の発想ははかりしない。 「適当なこといわれたくなかったら、全て白状するにゃ!」 「って言われても・・べ、別に何もしないんで・・」 「その動揺具合はおちびと一緒にゃ!なんか隠してるっ!!」 何故そんなことばかりに勘が良いんだろう・・と、 だんだんコトが大きくなっていく事態に胃を押える大石を尻目に、菊丸は海堂を問い詰める。 「さあさあ!早く!」 「・・・・・・っ」 「英二」 「せ、先輩っ!」 困りきった顔の海堂を救った天使(?)は、やはり乾であった。 「海堂は眠れない時は、マラソンをするとデータにあるぞ」 「えー・・普通じゃん!じゃなんで隠すんだよぉ!」 「眠れないときの突発的なマラソンは当然メニュー外、つまりオーバーワークだ。  俺に怒られると思ったんだろう。なあ海堂」 「え、あ・・そうっス・・」 「ふーん」 まだ疑惑の抜け切れていない菊丸に乾は続けて、 「眠れない時によく効くツボとマッサージを教えてもいいが」 「えっ!!そんなのあるなら、もっと早くいってよぉ!!」 「いや、何かいいデータが取れそうだったからね。しばらく様子を見る事にしたのさ」 「とにかく、早く教えてっ!」 「はいはい」 それから何日かたった日の晩。海堂はなんとなく眠れなくて布団の中をごろごろしていた。 実際のところ、マラソンというのは嘘である。 というのも、まず第一に本当にオーバーワークに当たる為、乾が許さない。 乾を怒らすと怖いし、自分の為に作ってもらっているメニューを無視するのも心苦しい。 第二にそもそも海堂家は夜10時完全就寝となっているため、夜中のランニングなど不可能なのである。 嘘をついているという菊丸の疑惑は実は当たっていたのである。 そして真実に関しても・・。 「・・・」 海堂は枕元においてあった携帯を取り出し、おもむろにどこかに電話を掛け始める。 RURURURU・・静かな室内にコールが響き渡る。 「はい。乾です」 「あ・・先輩・・・」 相手はご想像通りもちろん、乾貞治である。 「どうした海堂。この時間に掛けてくる時の用事は99%でいつものやつだが」 「っス・・眠れないんで・・。もしよろしければいつものお願いしたいんスけど・・」 「いいぞ。きちんと布団に入っているか?」 「っス」 「では・・いくぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「すーーーーーーーーーーーっ・・・・」 「はい。おやすみ海堂」 携帯を握り締めたまま、完璧に眠りについたらしい海堂に、 乾は一人自室で笑みをこぼしながら通話を切る。 「全く可愛いね海堂は・・。自分だけの特権なんていうんだから・・」 そう。海堂の本当の解消法。 それは、ずばり乾の低音ボイスで聞く円周率であった。 以前、冗談でやってみたらあっという間に海堂は寝てしまい、 それ以来眠れない時の習慣になっている。 自分ではなにもしなくてよく、また菊丸には海堂以上に効果のありそうなこの方法を 海堂はどうして黙り続けていたかというと・・先ほど乾が一人こごちていたように、 自分の恋人の声をやすやす夜中にエンドレスで聞かせたくないという、 可愛い嫉妬心からで・・。 「でも、俺も海堂の声を聞きながら眠りたいなぁ・・。  どうやっても俺の方がはるかに寝るの遅いから無理な話だが」 遅いどころか徹夜も常でそのたびに海堂に怒られている乾だが、 怒っている海堂も可愛いので今日もまたついつい徹夜していまう乾であった。

超久々に書いた乾海小説です。ネタ元はわかる人はわかったと思いますが 乾さんのアルバム「π」を聞いているときに思いつきました(笑) ちゃんと思いついた時にメモしておいたので、ネタ思いつきから時間がたった今も 書けました、いぇい!(←いつも忘れる) 元々円周率のオチの部分しか考えてなかったのですが、 ネタがもったいないのて、他のキャラも使って話を盛り上げようとしたら、 意外に長くなってしまいました。 私は眠れない時なんて月一もないかなぁ・・もうすっかり夜行性で、 眠いときばっかり・・これ書く間に何回居眠りしたことか・・。

2007年 1月28日




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