ちょこ

『・・薫さん・・薫さん・・起きて』 ん・・眠い・・。 母さんの声に起こされ、寝ぼけ眼のまま手元にあった時計を見てみると・・ 8時。 ・・・・・・・・・・・・・・遅刻だーーーーーーーーーーー!!!!!!!!! 「うわーっ!!な、なんで母さんもっと早く起こしてくれねぇんだよ!!」 慌てて飛び起き、朝練に行くため(と、いっても朝練は7時半からなので大遅刻である) パジャマを脱ぎ捨て、ジャージに着替える。 「だって・・目覚し時計こわれちゃったんだもん・・。  だ・か・らv今日は食堂でご飯を食べて頂戴ね」 「えー!?食堂・・!?」 食堂なんて・・そう、一年のときに好奇心で一度食べにいっただけだ。 味はとてもおいしかった。 おいしかったが・・。 ものすごーーーく混んでいた。 それこそ、人の波を押し分けへしわけで獲物をGETしたわけである。 ・・冗談じゃない。あんな人ごみの中に行くなんて! 「お弁当作ってる暇ないんだもの。葉末と飛沫さんには途中でコンビニによって、  何か買ってくるように言ったのだけど・・」 「・・!俺もそうするって!」 「薫さんの学校にいくまでに、コンビニなんてないじゃない」 母親ののほほんとしているが的確なツッコミにギクっとなる。 「・・・・・わかったよ」 「そう?はい。お金。急がないと学校にも間に合わないわよ・・?」 「げっ!!10分ーーー!!?!?」 これでは確実に朝練には間に合わない。 自分はのんびりとそんな事について会話している場合じゃなかったのだ。 「いってきます!!!!」 「朝御飯は・・?」 「いいっ!!」 こうして俺の波乱万丈な一日がはじまるのだった・・・。 案の定朝錬には間に合わず、すでにかたずけをし始めていた部員たちの注目を浴びながらも、 部長にあやまりにいき、放課後グランド20週をいいわたされた。 お昼。 朝御飯を食べてなかった俺は、ふらふらになりながらも、 見事食券をGETし、今、親子丼をほおばっていた。 今日はラッキーなことに結構すいていて、楽に食事にありつくことができた。 特に誰と一緒たべるわけでもなく、一人もくもくと食べていたのだが・・ 『ねえねぇvいよいよ明日はバレンタインだねーv』 自分の後のほうの席に座っていた3年らしい女生徒の声がきこえ、 はじめて、明日がバレンタインだという事に気付く。 ・・去年までは自分にはまったく関係のないできごとだったのだが・・ 今年は少し違った。 恋人が出来たのである。 もっともそれは男でクラブの先輩で・・ バレンタインに自分もチョコをあげるべきなのが、悩むところである。 (チョコ・・なぁ・・?あげたら喜ぶだろうけど・・) あの集団に混ざってチョコなど買う勇気なんてあるはずもない。 (どうしよう・・) そんな事を思っていると・・ 『秋子は今年は誰にあげるのー?』 『えーと・・やっぱり不二君かなv』 聞きなれた名前に耳がぴくりと動くが内容は別に気になるようなものではないので、 食事を再開する。 『そういう春美は誰にあげるの?』 『へへっ。実はねぇ・・乾君v』 ぶはーーっ!! 突然出てきた自分の恋人の名前に、思わず飲んでいたお茶を噴出す。 (はぁはぁ・・何驚いてるんだ・・俺・・。  別に先輩だって毎年結構な量をもらっているじゃないか・・) 『へぇーv乾君かぁ。彼もいいよねv頭いいし、テニスも上手だし長身だしvv  文武両道って乾君のためにあるような言葉だよねー?』 ・・まぁ・・少々むかつくが自分の恋人を誉められて、 嬉しくないはずはないので、聞き流す。 『うんv優しいし。それに・・なんといっても、あのミステリアスなところがたまんないv』 『素顔はすっごい美形だって話だよ?私は直接みた事ないけど、  11組の子がいってた。プールでみたんだって』 『私も11組がよかったなぁー』 『何いってんのよ。春美だって、あの手塚君と同じクラスでしょ?』 部長か・・あの人も今年もいっぱい貰うんだろうなぁ・・。 『うん、そうなんだけどねvあ、そういえば秋子は手塚君の笑顔って見たことある?』 笑顔・・? あの人の笑顔なんて正直想像できないなー。 『えー?ないけど・・春美は見たことあるの?』 『私もないんだけどね。実は・・友達から聞いたんだけど手塚君って乾君と一緒に入る時だけ、  笑うんだって』 ・・・・ちょっとまて。今聞き捨てならない事を聞いたような・・。 『何それー?』 『だ・か・らv乾君と手塚君はできてるって話v』 「・・・・・!!!!」 バキッ・・と音を立てて、割り箸が折れる・・。 ・・・・・冗談じゃない!!手塚部長と乾先輩ができてるー!? そんなわけねぇだろうが!! 乾先輩と付き合ってるのは、俺だ!! ・・そうさけんでやりたいけど、さすがにコトがコトだけに、 それを実行できない・・。 誰も止めるわけもなく、少女たちの会話はだんだんと怪しい方向に向かっていく・・。 『あ!やっぱりあのウワサ本当だったんだ!?  なーんだ・・乾君は手塚君のものだったのね・・。  じゃあ、チョコもらってくれないよねぇ・・?』 誰が誰の物だって!? だいたいウワサって・・!! 『うーん・・とりあえず、渡すだけ渡してみたら?』 『そうよね。じゃあ、今日がんばって作る!』 『手作りなんだぁ。がんばってねv』 『うん。二人の間は切りさけれないだろうけどね・・』 『でも、あの二人だったら許せるよねー。なんたって絵になる!!』 『お似合いすぎー・・』 『じゃ、そろそろ行こうか』 『次、数学かぁ。眠いなー・・』 ・・・・・・もう少し二人が出ていくのが遅ければ・・・・・ 俺は、本当に切れて暴れていたかもしれない・・。 誰がなんと言おうと・・乾先輩とつきあってるのは、この俺なんだっ!! 先輩も先輩だ! なんでそんなウワサ流れてるんだよっ!! たしかに、俺が嫉妬するぐらい二人は仲がいいのは認める。 認めるが・・あれは幼馴染という立場上そうなっているのだけなのであって・・! でも。 ただの幼馴染というだけにしては、やけに仲がいいような気がする。 それに、手塚部長が笑うのは乾先輩の前だけだって・・。 もしかしたら・・先輩は自分より部長のほうがいいんじゃないか・・? 嫌な考えが頭のよぎる。 (乾先輩の気持ちを確かめたい・・どうしたら・・) ・・・・数分考えた末、俺が思いついたのは・・・・ 手作りチョコとともに、あ・・愛//を告げることだった・・。 それに、先輩が俺も好きだよ・・とか、何を今更・・とかいってくれればいい・・// 我ながら・・はずかしい作戦・・(作戦というほどもないが)だけど・・ これしかない。 (よしっ・・がんばるぞっ!!) 2月14日。 いよいよやってきた。 チョコレートもかんばってつくってラッピングもした。 不器用な自分にとっては並ならぬ努力が必要だったのだが・・。 母親の助けの下、なんとか完成にこぎつけたのだった。 あとは、渡すだけだったのだが・・・ 実は本日はクラブが朝練とともになかった。 理由は・・女生徒から贈られる大量のチョコレートによって、 まったくクラブにならないからである・・。 よく思い出してみれば、去年もそうだったのに・・うかつだった。 2年の俺に、3年の先輩との接点がクラブ以外にあるはずもなく、 もしかしたら乾先輩が通りかかるかもしれないと思い、 2年の教室と3年の教室をつなげる廊下で、ぼーっとしていたのだが・・ 「海堂?」 不意に後から待ちわびた声がかかった。 「せ、先輩・・!?」 後ろを振り向けば、案の定乾先輩の姿が。 会えたのは嬉しいのだが・・その手に抱えている山のようなチョコレートは・・。 「先輩・・そのチョコ全部先輩のですよね・・?」 「そうだけど・・。まったく、迷惑なものだ。一応、直接きたものは受け取らなかったんだけど・・  結局のところは靴箱や机の上におかれるからさ、一緒なんだよねー・・」 他のもてない男子が聞いたら憤死しそうな台詞である。 まぁ、聞かなくても見ればわかるのだが。 「・・そうっすか・・」 「あ、安心して。全部義理だろうから」 先輩はそういうけど・・腕の中のチョコには、 あきらかに手間暇掛けてラッピングしたようなものがいくつもある・・。 自分も昨日苦労したクチだから、よくわかるのだ・・。 もっとも、この先輩はそういう事に関しては、極端に鈍いので、 全部義理だと本気で思ってるから怒るに怒れない・・。 そんなことより・・今は・・! 「せ」 「あーー!!そうだ!ちょっとまってて海堂!!」 名前を呼ぶ前に、去っていってしまった・・。 自分のクラスに戻っていったようだけど・・。 「お待たせ。・・海堂・・こっち来て」 全部チョコを教室に置いてきたらしい先輩は、自分を屋上のほうまでひっぱっていった。 中学校なのでもちろん事故防止のため、屋上は閉ざされているのだが・・ とある所から、はいれたりするのだ。 一体どこからそのことを聞いてのかはしらないけど、先輩が以前教えてくれて、 それ以来、二人の学校での逢瀬にはここをつかっていたりするのだった。 「いきなりなんすか・・?」 「今日、バレイタインでしょ?いらないの?チョコ」 綺麗にラッピングされた箱を取り出す。 ・・先輩も・・作ってくれてたんだ・・!! 「え、もちろんいります!!あ、あの・・俺も・・//」 先輩に渡すために実はポケットにいれてたのだ・・。 とけてないといいけど。 「うわ・・嬉しいよ。ありがとう。やっぱり、海堂からもらえるのが一番嬉しいよ。  他のは・・気持ちは嬉しいけど、俺には海堂のだけが価値あるものだよ」 さりげなく嬉しい事を言ってくれる・・// これじゃ・・俺がいう意味ないじゃん・・。 でもやっぱり。 「俺も・・先輩のだけで充分です・・っ!」 いつの間にか机の上に置かれていた、チョコレートの数々も、 この先輩のくれたものだけで、それは悪いけど価値のないものとなってしまう。 と。 せっかく幸せな気分に浸っていたというのに、その人は突然現れた。 「・・お邪魔して悪いんだが」 「・・・!!ぶ、部長!?!?な、なんでここに・・!?」 そう、俺を悩ませていた張本人。 手塚国光そのひとである。 「手塚?どうしたのこんなところで」 「教室はさわがしくて、飯も食えん」 「ここに逃げてきたってわけね」 ・・逃げてきたのはいいんだけど・・ 何でここのこと知ってるんだ?! ここは・・先輩と俺だけの秘密の場所じゃなかったんだ・・。 先輩と一番仲がいいんだから、しってて当然かもしれないけど・・。 やっぱり、ショックだった。 そんな俺のショックなんて、気付きもせず二人は会話を進める。 「あ、そうだ。はい、手塚」 突然、思い出したようにポケットからとりだしたのは・・ チョコレートが入っているだろうと思われる小さな箱。 ・・しかも・・俺と色違いのラッピングがほどこされてる・・! 「サンキュ。俺からも、な」 「・・・!!」 手塚部長にチョコをあげた人は何十人もいるだろうが、 貰った人なんか、皆無だと思ってたのに! 「ち、ちょっとなんで先輩達がチョコレートを・・!!」 「なんでっていわれても・・幼稚園ぐらいの頃からずっとあげてるからなぁ・・」 「すっかり習慣になってしまったようだな」 ・・・何が幼稚園だ。 ・・・何が習慣だ。 ・・・いくら、幼馴染だといっても・・普通恋人の前で、 チョコの受け渡しをするか・・?! 「・・先輩なんか・・もうしらないっ!!俺なんかのコトはほっといて、  部長といちゃいちゃしてればいいんだ!!!」 「・・!?か、海堂ー?!」 先輩の静止の声も聞かず、俺は自分の教室に走りかえったのだった・・。 〓自宅〓 俺は、自室で先輩に貰ったチョコの箱をじっと睨んでいた。 結局・・喧嘩別れみたいな感じになってしまったけど・・。 別に、先輩の事が本当に嫌いになったわけもないので、 捨てることなどはするわけもないが、 だからといって、素直に食べるというのも・・ 「・・とりあえず・・開けるだけあけるか」 たべる食べないは、それからでも決められる。 そう思い、ラッピングをそっとほどいていき、箱を開ける。 するとそこには・・ 「・・・!!!!せ・・んぱい・・//信じらんねぇ・・こういうことするから・・、  怒れねぇんだよ・・・・」 チョコの上にそっと乗せられた白いカードが一枚。 そこには、ただ一言だけ・・ 『好きだよ』 俺の機嫌は、たったそれだけで一気に治ってしまうのであった。 END

はい。三日遅れですが、バレンタイン小説です(笑) 乾受けにしようか、薫受けにしようか・・と散々悩んだ結果、 一応乾海だけど、薫ちゃんが乾さんにべた惚れという、 間をとった?結果になりました(爆) しかも、趣味で乾塚なのか塚乾なのかわからないものもはいってます(笑) 幼馴染と言ってますが、さりげに乾←塚だったりしますv 最後に。 薫ちゃん、ごめんね散々悩ませてv(爆)  2月17日
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