争奪戦
中学生なら誰にもあるはずの三者面談の時期がやってきた。
成績のあまり良くないものにとっては苦難の時期である。
特に悪くないものにとっては、授業の時間が減るので嬉しい週間だったりするのだが。
「部長・・今日、俺三者なんで抜けていいっすか・・?」
「ああ。海堂は今日か。わかった」
「海堂がんばれよー♪」
「エージ・・人のこと応援している場合じゃないだろう。
この間のテスト・・やばかったじゃないか・・」
「俺、明日だもん。明日は明日の風が吹くってねーvv」
「俺・・知らないぞ・・」
ちなみに今日三者に当たっているのは・・
桃城武。
河村隆。
不二周助。
海堂薫。
越前リョーマ。
の5人である。(たまたまこの日に集中していた)
それぞれ始まる時間帯は、桃城→不二→河村→海堂→越前の順である。
「終わったらすぐに帰ってこいよ」
「もちろんっす」
「海堂。親御さんはまだ来ないのか?たしか4時からの予定だろう?
あと、10分しかないぞ」
「・・なんで始まる時間知ってるんすか・・」
「データーだよv」
「聞くだけ無駄でしたね・・。母さんは・・あれ・・?
もしかしてクラスの場所知らないんじゃあ・・!?」
今更ながらのその事に気付き、慌てる海堂。
その時。
『薫さん?』
「・・!!か、母さん・・?!!?」
和服姿の上品そうな女性が、こちらの方に歩いてくる。
横には、小学生ぐらいの少年・・もいる。
「葉末も・・!?な、なんでここに・・!?」
「おー・・葉末。久しぶりだね」
「はい!乾さんもお元気そうで何よりです」
呆然としている当人を尻目に、葉末は母親から離れ乾の元に駆け寄る。
「おぉ!?薫ちゃんにそっくりだにゃ〜!?」
「弟くんだよね。海堂の」
「はい。いつも兄がお世話になっております」
「こ、こら葉末・・っ!!」
「ははっ。丁寧な子だね」
「顔はそっくりだけど、しゃべり方が全然違う・・」
「こら。失礼だろう」
「いえ。よく言われるので気にしないで下さい。
それより、乾さん」
「ん?何?」
「兄さんの懇談が終わるまで僕ここにいていいですか・・?
さすがについていくわけにもいかないんで・・」
「ち、ちょっとまて!だいたいお前学校はどうしたんだ・・!?」
「何言ってるんですか。今日は創立記念日だっていってたでしょう・・?」
「・・・そういえばそうだったな・・」
自分が小学校に通っていた時も、こんな時期だったように記憶している・・。
「別にいいよ。他ならぬ海堂の弟の頼みだしね。
手塚、少しぐらい打たせてやってもいいだろう・・?」
「・・別に・・お前が面倒を見るのだったらかまわないが・・」(←乾に甘い)
「大丈夫。葉末はしっかりしてるからね。
それでは、穂摘さん、葉末君はこちらでおあずかりいたしますね」
「まあ・・助かりますわ・・。どうしようかと思っていたころでしたの。
小学生だし、さすがに家に一人にしておくわけにはいかなくて、
つれてきてしまったのよ」
海堂母はおっとりとそう言った。
「あ、別に葉末ぐらいならつれてってもいいじゃねぇか!
ここにいても、迷惑になるだけだってっ!!」
「気にしないでって。手塚がいいっていってるからいいの。
ほら・・もう時間ないんじゃない・・?」
乾がちらりと見せた腕時計の針は・・3時55分をさしていた。
5分前である。
「あら・・大変。いきましょう薫さん」
と、海堂母は一人とことこと行ってしまった。
「ま、待って・・あぁ・・もう仕方ねぇ・・!!」
何でこんなに嫌がってるかって・・?
それは・・葉末が・・
「・・?なんであんなに嫌がってるんだ・・?
別に海堂の成績はそこまで悪くはないはずだが」
「兄のことは気にしないで下さい。
それより、乾さん僕スネイク打てるようになったんですよ!!
・・とはいっても、まだ3回に一度ぐらいしか入らないんですけど・・」
「ほう・・それはすごいな」
「へぇ・・!海堂弟・・えっと・・葉末君だっけ?スネイク打てんの・・!?」
「はい。この間乾さんに打ちかたおしえてもらったんです」
「さっきから気になっていたんだけど・・乾、よく葉末君のこと知ってたね」
「ああ。海堂の家にお邪魔したときにな」
「・・海堂の家にいったのか・・?」
「そうだけど?練習メニューの事とか自主練付き合ってほしい・・とかで、
何度かよばれててね」
「・・そうか・・」
「それがどうかしたの・・手塚・・?」
「いや・・気にしなくていい・・」
「変な手塚・・。まあ、いいや。時間もないし、コートに行こうか?」
「はいっ!!」
葉末はしっかりと乾の手をにぎって、嬉々とコートに向かっていった。
手塚(・・手・・羨ましい・・←本音)
「それじゃあ・・ラケットはこれをつかって」
「はい。それじゃあ・・見ててくださいね!!」
「うん。期待してるよ」
葉末の小さい体から打ち出された球は・・少し曲がったのだが・・
そのままネットに当たってしまった。
「あれ・・?失敗しちゃった・・」
「仕方ないよ。バギーホイップショットはかなり難しいからね」
「もう一球・・!」
今度は曲がりすぎて、アウトになってしまった。
「うーん・・?この間はできたのになぁ・・??」
「そうだねぇ・・もう少し・・」
乾がそこまで行った時、懇談を終えたらしい桃城が、
こちらに駆け寄ってきた。
「乾せんぱーい!何やってるんすか・・?って、おわっ!?ま、マムシ・・!??!」
「こら。この子は海堂の弟だよ。海堂の懇談が終わるまでここで預かってるわけ」
「へぇ・・マムシの身にサイズだから、ミニマムってか」
「マムシ・・??僕には海堂葉末という名前があるんですけど、ねぇ、乾さん」
横にいた乾のTシャツの端をぐいぐいと引っ張る。
「あ、ああ。桃。失礼だぞ。もう少し、年上としての自覚を持てよ。
さ・・お前も向こうで練習して来い」
「へーい」
桃城が行ったと思ったら・・今度は河村と不二がこちらにやってきた。
「河村・・不二・・。懇談は終わったのか・・??」
「うん。そこでタカさんと一緒になったんだ。
へぇ・・その子が海堂君の弟くんかぁ」
「葉末と申します」
「丁寧な子だね。僕は河村隆。3年だよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「僕は不二。不二周助。同じく3年だよ。こうしてみると・・つくづく海堂君に似てるね。
目元とかそっくり」
「でも性格は全然違うぞ。たとえばテニスにしても海堂はじわじわとねばっていくけど、
葉末は・・うーん・・どっちかっていうと俺や不二に近いかな」
「そうなんだ。でも、スネイクは打てるんだよね」
「ああ。身長はまだ小さいが、リーチはあるしね。
それにしても、よく知ってたな」
「英二から聞いたんだよ」
「うん。期待の後輩がはいるかもって、嬉しそうに話してたよ」
「そうか。葉末君が・・いずれ青学に入って、男テニを支えていってくれたら嬉しいな」
「僕・・乾さんのいなくなったテニス部なんて・・いやですっ」
「そういわれてもなぁ・・俺、今年で卒業だし。
葉末は来年1年か。海堂もいるし桃もいるし越前もいるし・・」
「でも、やっぱり乾さんがいないなんて・・!!」
「懐かれてるね。じやあ、僕たちはあっちで打って来るよ」
「ん。わかった俺も後で行くよ」
「了解」
不二と河村はそういって、Aコートの方へと去って行った。
「さて。さっきから言おうと思ってたんだけど・・」
「乾先輩っ!!!!」
校舎のほうから走ってくる陰一つ。
・・海堂である。
「海堂・・!?もう終わったのか・・??」
「・・は・・はい・・。葉末が迷惑になっていないか心配で・・。
終わってすぐ走ってきました。母さんのほうは・・ご近所の奥さんとしゃべってます・・!!」
息を切らしてまで言う台詞ではないと思うが・・。
「そうなんだ。葉末君つれていくのちょっと待ってね。
せっかくスネイク見せてもらってたんだけど、
邪魔ばっかいっちゃってさ」
「スネイク・・!?!?は、葉末お前・・!まさか・・できるのか・・!??!」
「はい。3回に1回ぐらいは。兄さんには負けませんよ」
兄の顔を見て、勝ち誇ったように笑う葉末。
・・そう、普段は仲のよい兄弟でも・・乾がかかわると別である。
一応、恋人と言う位置をキープしている海堂が焦るぐらい、
葉末は乾に懐いて・・というよりは、好いているのである。
それも、子供だという事を利用して、乾が家に遊びに来ても、
四六時中べったりで、自分がかまってもらえない事もしばしば。
・・もう大切なはずの弟は・・立派な恋敵なのである。
「そうそう。そのスネイクなんだけど・・フォームが少しずれてしまってるようだな。
ここを・・こう・・だ」
もう一本ラケットをだしお手本を示す。
「・・うーん・・よくわからないです・・。一度僕の腕でやってみてくれませんか・・?」
「・・!!お、おいっ!!」
「いいよ。ほら・・こうするんだよ・・」
乾は葉末の後ろに回り、腕を掴み正しいフォームをしめした。
・・当然その体制だと、体は密着状態で・・。
「葉末離れろっ!!」
「僕は教えてもらってるだけですけど?」
「そうだよ。どうしたんだ海堂・・?」
葉末が・・こちらを見て、にやっと笑う。(乾には背を向けているので見えない)
(・・絶対・・わざとだっ!!)
いつもいつもこんな感じなのである。
「それじゃ。さっきのフォームのままでやって見てくれ」
「はい。えーと・・えいっ!」
3度目の正直と言うのか・・球は綺麗な半円を描いて・・コート内に落ちた。
「・・!」
「やった!!入ったーー!!乾さん、ありがとうございます!!」
ぎゅーーっ・・と乾に抱きつく。
乾のほうも、葉末の身長にあわせ、身をかがめて抱きつかれたまま頭をなでてやる。
「!!葉末っ!!」
「よくやったな。葉末君。すごいぞ、こんな短期間でできるなんて・・。
やっぱり才能があるな。・・どうだ、君さえ嫌じゃなければ、
今からでも鍛えてみるか?練習メニューを作ってやるぞ」
「・・乾先輩・・!!」
先輩に誉められる事も、個別に練習メニューを作ってもらうことも、
・・そして、だきしめて貰えることも・・
先輩が葉末と出会うまでは、すべて俺だけのものだったのに・・!!
「さっきからどうしたんだ?海堂」
「あ・・え・・っと・・」
やっと、自分のほうに意識を向けてくれたというのに・・
「乾さん!!乾さん!!僕、やりたいです!!
僕のためだけ(強調)に、作ってもらえますか・・!?」
葉末があっという間に自分のほうに意識を向けさせる・・
「ああ。もちろんだ。葉末なら強い選手になれるだろうな」
「がんばります!」
『薫さん。葉末。そろそろ行きましょうか』
「あ、お母さん。そうですね、僕もスネイク打てたし・・」
母の出現でようやく乾から離れる。
「って、母さん!俺、まだクラブが・・!」
「あら・・?さっき部長さんが、今日はもう終わりだっていってらしたようだけど・・?」
「あ、そうか。懇談中は延長なしで5時までだったっけ」
「そういえば・・・。・・・げっ・・俺ほとんど練習してねぇ・・」
「兄さんより、乾さんですよ!僕の練習にずっとつきあっててくださってたんで、
全然練習できてなかったんで・・!」
「まぁ、別に一日ぐらいいいよ」
「でも・・」
「それなら・・乾さん。お礼もかねて今晩夕食を食べにいらっしゃらない・・?
私なんかの手料理でよければ、ご馳走しますわよ・・?」
『・・・!!(母さんナイスっ!! by 薫&葉末)』
「え・・?でも・・ご迷惑がかかるんじゃあ・・」
「全然迷惑じゃないっす!!」
「そうですよ!なんなら、とまっていって下さいよ!
僕、勉強で教えてほしいところがあるんです!」
「あ、俺もっ!!」
連れて行ってもまた葉末が独り占めするかもしれないが、
乾は泊まる時は必ず海堂の部屋で寝てくれるので、
その時に自分も独り占めできるのである。
「そういわれても・・なぁ・・?」
「大歓迎ですわ。息子たちも喜んでいるみたいだし、
主人もあいたがってましたわ」
銀行員である海堂の父とは株の話なんかで盛り上がるのである。(すでに中3じゃない・笑)
「そうですか。じゃあ・・お言葉に甘えて・・」
・・こうして海堂家により、乾のお持ち帰りは決定されたのであった。
続く・・?
『争奪戦』・・正式なタイトルは、
「海堂家による乾貞治争奪戦」です(そのまま・爆)
乾海なのか海乾なのか・・葉末乾(有力候補・笑)なのか乾葉末なのか・・
乾塚なのか塚乾なのか・・管理人にもさっぱりわかりませんv(爆)
このためにリバCPのコーナーがあるんだなぁ(笑)
考え方によっては、全部のCPの方に読んでもらえるの・・かも?(笑)
一応続きます。
いつ書くかわからないけど(笑)
不明(笑)
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